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洋食器コラム
 
 
■第5回 転写技法について■
 前々回(第3回)の「絵付について」では、もっぱら手描きを中心に話を進めたような気がします。そこで今回は、手描きと並ぶもう一つの代表的な絵付の技法である、転写について触れておきたいと思います。
 転写は正確には「銅版転写法」と言います。スポードの創業者であるジョサイヤ・スポードが実用化したといわれていますが、それより早く1756年ごろ、ジョン・サドラーとガイ・グリーンがその技術を完成したと考える人もいます。ともかくも、18世紀中葉のイギリスで、初めて転写技法が陶磁器に対して使われるようになったというわけです。
 転写は最初、上絵付が試みられたようですが、すぐに色落ちしたりかすれてしまうため、施釉前の素焼に行われ、やがて技術改良を待って、上絵付としても応用されるようになりました。

その方法は、  
(1) 銅版の表面を蜜ろう、松脂、アスファルトでコーティングする。   
(2) この表面に鉄筆で文様を描き、酸で腐食させる。   
(3) グリセリンなどで粘度を高めた磁器専用絵具を、ローラーで文様の上に塗り付ける。   
(4) 紙や布に文様を写す。   
(5) 文様がプリントされた紙や布を磁器に当て、上からこすることにより転写を完成させる。

 
以上ですが、この方法はあくまでも原理的なもので、現在ではもっと洗練されていると思います。ウエッジウッド社の礎を築いたジョサイヤ・ウエッジウッドは陶磁器界においても、マスプロダクションの時代がやがて来ることを予見していました。そんな彼にとって、動力源としての蒸気機関を導入(1782)し、転写技法を採用することは、正しく必然であったことでしょう。かくして、かつては一部特権階級に属する人々の贅沢品であった陶磁器は、急速なまでに普及の速度を上げていったのです。



 また確かにこの転写技法は、多くの名品を安価に復刻する道も開きました。しかし、手描き特有の筆勢やタッチまでも完全に再現することは不可能です。加えて、よく見れば省略も行われていることがあります。手頃な値段で多くの人々が、こうした素晴らしい伝統工芸品を身近に置けるようになったことは、技術・文明の最大の利点と言えましょう。しかしその一方で、あくまでも工芸品としての価値とその伝統を守らんとする人々、工房、メーカーが存在することも、大変に尊く、心強いことではないでしょうか。 

 第2回の「焼物いろいろ」に関して、何故ボーンチャイナがイギリスで誕生したのかとの問いがありました。答えは、直接的にカオリンの入手が困難だったこと、そしてもう1つには18世紀後半、イギリスから始まった産業革命を背景とした技術革新の流れがあったということです。
文責:三沢 厚

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